和同開珎・絵図
和銅元年、朝廷より世に出でし円き銭あり。名を和同開珎と申す。外は円く、内には四角き孔を穿つ ── 円形方孔のその姿、千三百年を経てなお、見る者の目を引いて離さぬ。
四つの字を上・下・右・左に配し、巡らせ読むが、かの銭の習いにて候。されば今宵の絵図も、銭の姿にあやかりて拵えた。中央にぽっかりと空いた一つの孔 ── ここに嵌まるべき一字こそ、本日の御題に御座る。
四方の絵を、矢印の指し示す順に読まれよ。いずれも、ありふれた二字の熟語と相成る。
御題
四つの絵図から矢印の順に読めば、いずれも二字熟語と相成る。 中に入る共通の文字、解き明かしてくだされ。
今の季節に薫るあの言葉、童も習う九画の文字に御座る。
孔へ出入りする四方の絵
矢印は、読むべき順を示しておる。
- 孔へ向かう絵は「絵 + 答」
- 孔より出づる絵は「答 + 絵」
と読み下せばよい。
左の絵 ── 朝日を背に聳ゆる霊峰は、初春の吉夢に「一に◯◯、二に鷹、三に茄子」と数えらるる、あの一座に御座る。さすれば、数の「一」に通ずるが知れよう。
「今の季節に薫る言葉」と申せば、答えはもう、半ば薫り立っておろう。
答えを見る
答えは ── 風(かぜ・ふう/九画)。
中央の孔に「風」を据えれば、矢印の順に四つの熟語が立ち上がる。
| 方位 | 絵図 | 読む順 | 成る熟語 |
|---|---|---|---|
| 上 | 台(供物の載りし台座) | 台 → 風 | 台風(たいふう) |
| 下 | 車(荷車の車輪) | 風 → 車 | 風車(かざぐるま) |
| 右 | 土(盛られた土の山) | 風 → 土 | 風土(ふうど) |
| 左 | 富士(=「一」) | 一 → 風 | 一風(いっぷう) |
左の絵、なぜ「一」か
朝日に映ゆる富士の山。これぞ「一富士二鷹三茄子」── 初夢に見れば縁起よしと数えらるる、その筆頭に御座る。富士は数の「一」を背負うておる。ゆえに「一 + 風」で「一風」と相成る。
「風」を選びし理由
九画にして小学二年で習う、童も知る一字。されど「今の季節に薫る言葉」── すなわち 薫風。初夏、若葉の香を運びて吹く風を指す季語に御座る。皐月晴れの空の下でこの絵図を解かれた御方は、知らず識らず、季節の風に当たっておられたわけ。
和同開珎のこと
和銅元年(七〇八年)に鋳られし、日本でも指折りに古き流通貨幣の一つ。唐の開元通宝に倣い、外円・内方孔の形を採った。表に並ぶ四字「和・同・開・珎」は、上・下・右・左の順に読むのが習いにて候。
この絵図もまた、銭の方孔を中央に据え、四方に絵を配して「読ませる」── かたちそのものが、千三百年前の銭への、ささやかな目配せに御座る。
円き銭の小さき孔に、いにしえの人々もまた、何かを通して世を眺めていたのやもしれぬ。本日はそこへ、一陣の「風」が吹き抜けた。
次なる謎、また改めて。