難易度 ★★★☆☆

手習ひ処の絵手本、夏の判じ一問


手習ひ処の絵手本、夏の判じ一問

蝉時雨の降りしきる、昼下がりの手習ひ処(てならひどころ)。

机を並べた童(わらべ)らに、師匠がひとこと ──「読み書きの道は、まづ手本に倣ふが肝要」。

壁に掛かりたるは二枚の絵。いづれも、描かれた物の音を継いで読む判じ絵にて候。まづは〈手本〉一枚、答へまで示してあるゆゑ、これにて読みの作法を会得なされよ。合点がいけば、隣の〈問〉へ。三つの絵を続けて読み解けば ── さても、夏のあの涼みが、目の前に顕るる。

御題

【作問修行】手習ひ処の絵手本、夏の判じ一問

蝉時雨の昼下がり、師匠いはく ──「読み書きは、まづ手本に倣ふが肝要」。

されば〈手本〉を御覧じよ、その作法はそこに。会得せば〈問〉へ。三つ続けて読み解かば、夏のあの涼みが顕るる。何と申す?

手本〈書置き〉に、読みの作法あり

絵の音を継いで、一つの言葉にまとめる趣向にて候。

されど肝は、ここ ── 人が「何かをしてゐる」絵は、物の名で読むにあらず。〈手本〉の一問が、その読み方を身をもって教へており申す。まづは左の〈手本〉を解いて、作法を会得なされよ。同じ手つきで、隣の〈問〉も読めまする。

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答へは ── そうめん流し(流しそうめん)

肝は、人の所作を描いた絵を「物の名」ではなく「何をしてゐるか」で読むこと。所作を連用形の名に転じて音を継ぎまする。

パネル絵の中身継ぐ音
〈手本〉柿 + 文を置く所作かき + おき = 書置き
〈問〉僧 + 能面 + 文を流す所作そう + めん + ながし = そうめん流し

〈手本〉が示す通り、「文を置く」は物の名「ふみ」ではなく、所作を名にした「おき」と読む。同じく〈問〉の「文を流す」も「ながし」。両パネルに添へた文(ふみ)は、読ませるための脇役 ── これに惑はされぬが、会得の証にて候。

三つ継げば「そう・めん・ながし」。青竹の樋(とひ)を清水がすべり、素麺の一筋が流れゆく ── 夏のあの涼み、そうめん流しにて候。

ちなみに ── 竹樋を流れ下る式を「流しそうめん」、円(まる)き器で水を回す式を「そうめん流し」と呼び分くる向きもござる(もつとも西国では竹樋の式をも「そうめん流し」と申すゆゑ、境は緩うござる)。古き習ひと思ひきや、その実は存外に新しく、竹樋の式は昭和三十年ごろ、宮崎は高千穂に発したとも伝へられ候。此度の絵は竹の流れ ── いづれの名で呼ぶも、一興にて候。

手本があれば、人は難所も越えてゆける ── 教へてから解かせるこの趣向、はたして御身の目には、蝉時雨の向かうに涼が見えたりや。

次なる謎、また改めて。

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