新緑の薫風、膳に満つる図
皐月の風、青葉を抜けて袖をすべる頃にて候。
朱塗りの盆に、黄金の天婦羅が盛つてござる。見るからに香ばしき一皿にござる。
「描かれておる」ことそのものが、いかなる季節の習はしを示すか。 お主の目利き、いざ試され候。
御題
【作問修行】新緑の薫風、膳に満つる図
盆の上の黄金色の揚げ物。 箸を伸ばせばサクと音が響く一枚。 ただこの一皿が「描かれておる」ということそのものが、いかなる季節の習わしを表しておるか。
お主は見破れるかな?
衣に描かれし、いづれの景か
天婦羅の身ではなく、其の 衣 のさまをよく見られよ。 衣に描かれし景は、いづれも季を映すもの。 ことば一つにて、二つの意味あり。
答えを見る
答へは 「衣替(ころもがへ)」 にて候。
| 部分 | 仕掛け |
|---|---|
| 天婦羅の 衣 | 揚げ衣のこと |
| 衣に描かれし 絵 | 紫陽花・菖蒲・鯉幟・紅梅などの季景 |
| 衣 + 絵 | 「衣が絵」と読み、即ち「衣替(ころもがへ)」 |
★ 解いた御仁への、二つの土産話
一、衣替は、もとは年に二度の宮中の儀礼にござつた。
旧暦四月一日に夏装束へ、十月一日に冬装束へ改むるを「更衣(かうい)」と申し、後に庶民の間にも広まり候。
明治の御代より新暦の六月一日と十月一日と定まり、今に伝はる衣替の風景となり申した。
二、四月一日と書いて、「わたぬき」と読む家がござる。
冬の間は、着物の表と裏のあひだに綿を入れて寒さを凌いだ。旧暦四月一日の衣替には、その綿を抜いて袷に仕立て直す ── ゆゑに「四月一日」「四月朔日」と書いて「わたぬき」と読む姓が生まれ申した。
姓氏の事典によれば、「四月朔日」は石川・富山を筆頭に日本海側に点在し、「四月一日」は宮崎や屋久島に見えるとのこと。
旧暦の四月一日は、今の暦ではおよそ五月の初めにあたる。この絵図を投げた皐月の末は、ちやうど綿を抜き終へた頃合ひにござつた。
黄金の一皿に、皐月の季がひと筋。 和語の妙、まこと尽きせぬものかな。
次なる謎、また改めて。
五月の風が青葉を抜けて、袖をすべっていく頃です。
朱塗りのお盆に、黄金色の天ぷらが盛られています。見るからに香ばしい一皿です。
「描かれている」ということそのものが、どんな季節の習わしを示しているのか。 あなたの目利きが試されます。
御題
【作問修行】新緑の薫風、膳に満つる図
お盆の上に、黄金色の揚げ物。 箸を伸ばせば、サクッと音が響く一枚です。 この一皿が「描かれている」ということそのものが、どんな季節の習わしを表しているでしょうか。
見破れますか?
衣に描かれた、どの景色か
天ぷらの中身ではなく、その 衣 の様子をよく見てください。 衣に描かれた景色は、どれも季節を映すものです。 ひとつの言葉に、二つの意味があります。
答えを見る
答えは 「衣替(ころもがえ)」 です。
| 部分 | 仕掛け |
|---|---|
| 天ぷらの 衣 | 揚げ衣のこと |
| 衣に描かれた 絵 | 紫陽花・菖蒲・鯉のぼり・紅梅などの季節の景色 |
| 衣 + 絵 | 「衣が絵」と読んで、「衣替(ころもがえ)」 |
★ 解いた方への、二つの土産話
一、衣替は、もとは年に二度の宮中の儀礼でした。
旧暦の四月一日に夏の装束へ、十月一日に冬の装束へ改めることを「更衣(こうい)」と呼び、のちに庶民の間にも広まりました。
明治になってからは新暦の六月一日と十月一日に定まり、今に伝わる衣替の風景になりました。
二、「四月一日」と書いて「わたぬき」と読む姓があります。
冬の間は、着物の表と裏のあいだに綿を入れて寒さをしのいでいました。旧暦四月一日の衣替では、その綿を抜いて袷(あわせ)に仕立て直します ── そこから「四月一日」「四月朔日」と書いて「わたぬき」と読む姓が生まれました。
姓氏の事典によると、「四月朔日」は石川・富山を筆頭に日本海側に点在し、「四月一日」は宮崎や屋久島に見られるそうです。
旧暦の四月一日は、今の暦ではおよそ五月の初めにあたります。この絵図を投稿した五月の末は、ちょうど綿を抜き終えた頃合いでした。
黄金の一皿に、五月の季節がひと筋。 和語の面白さは、本当に尽きることがありません。
次の謎は、また改めて。