難易度 ★★★☆☆

三句三図・其の三


三句三図・其の三

三句の共通より詠み手を導く「三句三図」、露の間の三景(芭蕉)、其の二(其角)に続き、これが第三の巻にございます。

このたびの三図、いづれも夏の景。されどよくよく眺むれば、三つながら、どこか一幅の絵を見るやうな趣がございましょう。それもそのはず ── と申すのは、まだ早うございますな。

絵の左上、腕を組んで佇む影がひとつ。この影の正体こそ、このたびの問ひにございます。

御題

三つの絵がございます。

一の図 ── 夏の河を、草履を手に裾をからげ、笑みを浮かべて素足にて渡る人。 二の図 ── 月かかる宵、水辺の宿。水面よりぬっと顔を出すは ── 河童。 三の図 ── 葉の上の毛虫、その背にきらりと光る露の玉がひとつ。

三図はいづれも、同じ俳人の句を写したもの。 三句に通ふ作風より、その詠み手の名を申されよ。

詠むも描くも、同じ筆

三図がどこか絵画めいて見えるは、偶然にあらず。この御仁、句ばかりでなく、絵筆でも一家を成した人にございます。景をそのまま一幅に切り取るやうな句風 ── そこが手がかり。

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答へは ── 与謝蕪村

三句に通ふのは、景をまるで絵のやうに切り取る眼にございます。蕪村は俳人にして絵師、俳画の道を拓いた人。写実の細やかさ(毛虫の上の露の玉)と、ふっと幻へ足を踏み入れる趣(河童の恋)、そして夏河を渡る体の喜びまで ── いづれも「見える句」「触れる句」として立ってをります。芭蕉の求道、其角の伊達に対し、蕪村は画人の眼。三句三図といふ形式そのものが、この人のためにあるやうなものにございますな。

さて、三図それぞれの元句は何か ── それは次の「おまけ」の段にて。

おまけ ── 三句の文言当て

X にては翌日の引用にて重ねて問ひました、もうひと巡り。

作者は定まりました。されば三図それぞれ、 蕪村のいづれの句を写したものか ── 正しき文言にて申されよ。

題材ふたつ重なれば、句はひとつ

作者が定まった今、探すべきは蕪村の句のみ。図に描かれた題材を二つ重ねれば ── たとへば「毛虫」と「露の玉」── 当てはまる句はただ一句に絞られまする。

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三図と三句の対応は、かやうに ──

夏河と草履夏河を越すうれしさよ手に草履
水辺の宿と夏の月河童の恋する宿や夏の月
毛虫と露の玉みじか夜や毛虫の上に露の玉

「夏河」は渡る足裏の心地よさまで写す体感の句。「河童」は現と幻の境をふらりと越える句。「みじか夜」は極小の景に朝の光を宿す句。三様に見えて、いづれも眼前に一枚の絵が立ち上がる ── これぞ画俳ふたつの道を歩んだ蕪村の筆にございます。

句を読めば絵が見え、絵を見れば句が聞こえる。問と解のあはひにも、かやうな行き来がございます。三句三図、次なる巻はいづれの俳人か ── それはまた、季節の巡りとともに。

次なる謎、また改めて。

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